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  • はじめに|このブログについて

    はじめに|このブログについて

    家づくりで本当に怖いのは知らないまま進んでしまうことです。
    建築会社は、それぞれの立場で家づくりに向き合っています。
    ただ、立場と役割の違いという「仕組み」を知らないまま進むと思わぬ行き違いが生まれることがあります。

    私は、住宅建築の現場に50年立ち続けてきました。
    その中で多く見てきたのは、知識不足ではなく「仕組みを知らなかった」ことによる後悔です。

    このブログでは、住宅づくりの建築会社選びで外してはいけない本質を、一つずつ整理しています。

    もし、よろしければ、次の目次から、お好きな章のタイトルをクリックし、リンク先よりお読みください。
    すべては、そこから始まります。

    ▶ 本書の内容(目次)


    第1回 坪単価で会社を選ぶと「安物買いの銭失い」になる ― 同一条件でない比較の落とし穴 

    第2回 高額なお金を最初に取る会社は、なぜ要注意なのか(着手金・手付金さき取りの営業手法)

    第3回 なぜ施主は建築会社の「専門性」を追求しないのか ― 最初ミスが取り返しのつかない差になる

    第4回 「性能は良いはずなのに寒い」の正体 ― なぜ「住んでからの違和感」は必ず起きるのか

    第5回 建築会社の知識・技術力の差は想像以上に大きい ― なぜ「普通」に見えて、中身が違うのか

    第6回 照明計画は「おしゃれ」と「明るさ」は別問題 ―「眩しいのに暗い」という現実の失敗

    第7回 住み心地の不満は、すべて「契約前」に防げる ― なぜ後悔は完成後にしか見えてこないのか

    第8回 大手ハウスメーカーは安心という「幻想」― 巨大な組織が準備する、自社を守るための法律の壁

    第9回 「デキる営業マン」は休日の展示場にはいない ― モデルルームであなたを待つのは誰なのか?

    第10回 その保証、会社が潰れたら「紙クズ」です ― 30年保証の前に、その会社の30年後を想像せよ

    第11回 家づくりは「チーム」で動いている ― 組織の仕組みを知れば、振り回されずに済む

    第12回 建築士が介在して生まれた「数百万円」の差 ― 依頼前に知るべき、コストの真実

    第13回「救世主」となる建築士をどう探すか ― 支払いすら止める、施主代理人の「本当の活用術」

    工事中! 第14回「作品を作る建築士」に家を任せてはいけない ― 木造住宅を託せる真の実力とは?

  • 第11回 家づくりは「チーム」で動いている ― 組織の仕組みを知れば、振り回されずに済む

    第11回 家づくりは「チーム」で動いている ― 組織の仕組みを知れば、振り回されずに済む

    「大手だから」「地元で有名だから」と、会社を一つの大きな「塊(かたまり)」として捉えてしまうと、本質を見失います。

    家づくりは、それぞれの役割と責任が違うプロたちの「リレー作業」です。

    誰が何を「決めて」いるのかを整理する

    会社(土台): 契約の責任を取り、倒れない体力を維持する「器」。

    営業(窓口): あなたの夢を聞き、形にするための「調整役」。ただし、現場のことは詳しくない場合も多い。

    現場(実働): 設計図を現実に作り上げる「技術者」。あなたの家を実際に作るのは、会社ではなく「この人たち」です。

    責任の「押し付け合い」を防ぐために

    トラブルが起きたとき、営業は「現場が……」と言い、現場は「そんな指示は聞いていない」と言う。組織が大きくなればなるほど、この**「責任の空白地帯」**が生まれやすくなります。

    だからこそ、施主であるあなたは「誰がどこまで責任を持つのか」を、契約前に明確にする必要があります。

    特に設計と現場の責任者は、事前に名前を聞いてください。

    【プロの眼力】

    会社という「看板」に安心料を払っているつもりでも、実際に釘を打つのは生身の人間です。

    「仕組み(会社)」「人(担当)」「現場(職人)」。この3つの歯車がしっかり噛み合っているかを確認して初めて、安心への一歩が踏み出せるのです。

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  • 第10回 その保証、会社が潰れたら「紙クズ」です !  ― 30年保証の前に、その会社の30年後を想像せよ

    第10回 その保証、会社が潰れたら「紙クズ」です !  ― 30年保証の前に、その会社の30年後を想像せよ

    「30年長期保証!」「充実のアフターサービス!」

    パンフレットに躍る魅力的な言葉。しかし、どんなに立派な長期の保証書も、その会社が存続していなければ、ただの紙クズにすぎません。

    住宅業界に押し寄せる「存続」のリスク

    今の時代、創業から10年、20年と長く続く会社は決して多くありません。ましてやこれから、日本の住宅市場は少子高齢化で縮小の一途をたどります。

    あなたが本当に困るのは、建てた直後ではなく、10年後、20年後に雨漏りや設備の故障が起きた時です。

    その時、電話をかけた先が「現在使われておりません」となっていたら、どうしますか?

    「長期保証の年数」より「会社の体力」を見よ

    10年間の構造保証は法律で義務付けられていますが、それ以外の独自保証は、あくまで、その建築会社の「経営状態」に依存します。

    その会社は、地域に根を張り、長く続く信頼を得ているのか?

    目先の利益のために、無理な安売りや拡大をしていないか?

    ちなみに、設立から10年では経営に不安が考えられます。

    【プロの眼力】

    保証は「内容」だけではなく「保証する相手」で選ぶものです。

    華やかな宣伝に目を奪われず、**「この会社は、10年後のメンテナンスを笑顔で受けてくれる体力を維持しているか?」**という経営の安定性を見極めてください。

    保証やアフターは、保証内容と会社の体力、この二つを、必ずセットで見る必要があります。

    長い保証年数が書かれていても、会社経営が続けられなければ意味はありません。約束を守り続けられる会社かどうか。そこまで考えてこそ、住み始めてから後悔しにくい家づくりにつながります。

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  • 第13回 「救世主」となる建築士をどう探すか ― 支払いすら止める、施主代理人の「本当の活用術」

    第13回 「救世主」となる建築士をどう探すか ― 支払いすら止める、施主代理人の「本当の活用術」

    前回、建築士を味方につけることで92坪の家でも2086万円もの差が出た実例をお話ししました。

    今回は「では、どうやって信頼できる建築士を探し、どう活用すればいいのか」という、具体的な手順を公開します。

    1. 最初の窓口は「建築士事務所協会」にある

    多くの人はネット検索だけで探そうとしますが、実は確実な方法があります。各都道府県にある「建築士事務所協会」という公益団体に相談することです。

    ここには、そのエリアの事務所の得意分野や人員構成、さらには過去のトラブル情報なども蓄積されています。「家づくりを専門にする建築士を紹介してほしい」と電話をかけ、数カ所の候補を挙げてもらうのが、失敗しない第一歩です。

    2. 「口のうまい建築士」には要注意

    紹介を受けた数名と面談する際、どこを見るべきか。 建築士は本来、職人気質で言葉を選びながら慎重に話す人が多いものです。

    • 要注意なタイプ: 芸人のように口数が多く、おだて上手。
    • 信頼できるタイプ: 地味でも、あなたの希望を最後まで聞き、リスクについても正直に話す。

    派手な広告宣伝費を使えないためホームページは地味かもしれませんが、そこには「宣伝」ではなく「実績」が眠っています。

    3. 建築士だけが持てる「最強の切り札」

    建築士を雇う最大のメリットは、単なる図面作成ではありません。建築会社が工事ミスを犯したり、手抜きをした際、「工事代金の支払いを止める根拠」を提示してくれることです。

    建築会社にとって、最も堪えるのは「お金を止められること」です。 しかし、素人である施主が銀行に「納得いかないから支払いを止めてくれ」と言っても、銀行は応じてくれません。ここで建築士が「技術的な不備がある。直るまで支払うべきではない」という証明を行うことで、初めて支払いにブレーキがかかります。

    4. ダメなものは「壊してやり直し」を命じる強さ

    建築士は施主の代理人として、工事現場で厳しい目を光らせます。完成間際であっても、納得がいかなければ「壊してやり直せ」と命じる。これができるのは、彼らが「プロ対プロ」として、法規と技術の絶対的な根拠を持っているからです。

    建築士を味方につけるということは、あなたが建築会社の言いなりにならず、常に対等な立場でいられるということです。まさに「救世主」の力を得ての家づくりと言えるでしょう。

    #家づくり #注文住宅 #建築士 #施主代理人 #ハウスメーカー比較

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  • 【第5群】もう一つの家づくりの選択肢

    【第5群】もう一つの家づくりの選択肢

    第12回 建築会社に「依頼」する前に知るべきこと ―  大きな金額の差額を生んだ「建築士」の有効利用

    「家づくりは、有名な会社に全部お任せするのが一番安心」……そう思っていませんか?

    しかし、その「安心」という感覚が、時として数百万円、数千万円という単位の施主損失を招いている現実があります。

    今回は、私が実際に出会った、ある92歳の女性施主様のエピソードを通して、建築業界の知られざる構造と、あなたの資産を守る「もう一つの選択肢」についてお話しします。

    92歳の願いを阻む「8800万円」の壁

    4年前、私の講習会に一人の高齢女性が娘さんと共に来られました。

    「死ぬまでに、暖かな家に住みたい」

    築60年の寒い自宅を建て替えたいという切実な願いでした。しかし、提示された相談票を見て私は愕然としました。

    あるハウスメーカーが、90坪の計画で**「8800万円」**もの見積りを出し、毎日のように自宅へ押しかけて仮契約を迫っていたのです。さらに解体費に550万円、まだ契約もしていない段階で設計料110万円を請求されるという信じがたい状況でした。

    2086万円の損失を食い止めた「建築士」の眼力

    私は、そのハウスメーカーとの交渉を白紙に戻し、**「設計施工分離発注方式」**へと舵を切り直しました。

    これは、設計と工事の監理を独立した「建築士事務所」が受け持ち、工事を「建築会社」が行うという、大きなビルや公共工事が行う一般手法で、設計と工事を明確に分ける方法です。

    結果、その後どうなったか。

    解体工事: 550万円 → 330万円・・・(220万円の削減)

    地盤調査: 22万円 → 11万円・・・(11万円の削減)

    新築工事費: 8800万円(外構別途90坪) → 6945万円(外構込92坪)・・・(1855万円の削減)

    今回は、外構工事まで含めても、ハウスメーカーの提示額より合計で2086万円もの差が出ました。

    もし、建築士が第三者の立場で「工事費の正当性」を査定していなければ、この差額は消えていたのです。

    ただ、今回のケースは92坪の2世帯住宅なので、一般の小さな4LDK住宅にすると3軒分になります。

    今回、実際の住宅の延べ面積は92坪で、2086万円の差ですから、仮に、これを3軒分として3で割ると住宅1軒分の差額は、約695万円になります。このように建築士が施主の見方となり、施主の代理で家づくりに取り組むと、優秀な施主にとって「鬼に金棒」となること間違いなしです。

    設計施工一括発注「自分を自分で採点する」仕組みの危うさ

    なぜ、これほどまでの差が出るのでしょうか。

    現在の主流である「設計施工一括発注(ハウスメーカーなど)方式」は、窓口が一つで便利に見えます。

    しかし、構造的には以下のようになっています。

    自分でテストを作り(設計)

    自分で回答を書き(工事)

    自分で採点をする(工事管理 完了検査)

    これでは、ミスがあっても、コストが不透明でも、施主には何も見えません。

    なぜか「プロ(会社)対 素人(施主)」という圧倒的に不利な構図だからです。

    建築士は、あなたの資産を守る「用心棒」

    一方、「設計施工分離発注方式」は、「プロ(建築士)対 プロ(建築会社)」という構図を作ります。

    建築士は、施主の代理人(エージェント)として、図面通りに工事が行われているか、手抜きはないか、見積は適正かを厳しくチェックします。

    「建築士に頼むと設計料がかかって高い」というのは誤解です。

    一括発注の工事費に含まれている不透明な経費を削ぎ落とし、適正な価格で発注させることで、建築士に設計料を払ってもなお、総額では安く、かつ高品質な家が建つケースが多々あるのです。

    結論:設計料は「無駄」ではなく「保険」である

    建築会社の社員は、最終的には「自社の利益」を守ります。しかし、分離発注の建築士は「施主の利益」を守ることが仕事です。

    設計から工事まで「すべてを任せたい」という方には向きませんが、「納得して、長く安心して住める家を建てたい」と願うなら、建築士を味方につけることは、何よりの防衛策になります。

    「設計施工分離発注方式」で3階建ての二世帯住宅を建てた
    92歳のおばあ様のその後

    私の人生で、残る寿命の短い施主に出会って、私は感動し、仮の母だと思い、誠心誠意、家づくりのお手伝いをさせていただきました。

    あの92歳のおばあ様は、完成した家の玄関まで、車椅子ではなく自らの足で歩んでいかれました。あの満面の笑みは、正しい「選別」が生んだ、私への最高のご褒美だったと確信をしています。

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  • 第9回 「デキる営業マン」は休日の展示場にはいない!  ― モデルルームであなたを待つのは誰なのか?

    第9回 「デキる営業マン」は休日の展示場にはいない!  ― モデルルームであなたを待つのは誰なのか?

    家づくりの良し悪しは、会社の看板ではなく「誰が担当になるか」で決まります。

    モデルルームで出迎えてくれた担当者が、話しやすかったからといって安心してはいけません。

    業界の不都合な真実

    実は、本当に実績があり、施主たちから信頼されているエース級の営業マンは、土日祝日の住宅展示場にはほとんど立っていません。

    なぜか。彼らは過去の施主からの紹介や指名の相談で、スケジュールがいっぱいだからです。わざわざ展示場で「新規の呼び込み」をする必要がないのです。

    では、土日祝日に展示場の入り口であなたを待っているのは誰でしょうか?

    入社したての経験不足な新人

    なかなか成績が上がらない担当者

    とりあえず順番で座らされている担当者

    運任せで出会った担当者が、あなたの「人生最大の買い物」を差配する能力を持っている保証はどこにもありません。

    【プロの眼力】

    最初に対応する営業担当者が、必ずしも優秀とは限らないという現実を考えてみて下さい。

    どれほど立派な理念を掲げている会社でも、社員全員が同じ知識や経験を持っているわけではありません。

    組織が大きくなればなるほど、営業担当者ごとの力の差は、はっきりと出てきます。

    よって、担当者は、会社から「割り振られるもの」ではなく、あなたが**「選ぶもの」**です。

    もしその会社が気に入ったなら、こう切り出してください。

    「社長や支店長、支社長など、責任者クラスの人と会えますか」と聞いてください。

    「責任者の方とお話しさせてください。」とお願いしてみてください。

    そして、面談出来たら「御社で一番経験豊富で、現場を熟知した担当者をつけてください」これを言えるかどうかが、あなたの住宅づくりの成功と失敗の分かれ道です。

    家づくり #住宅展示場 #ハウスメーカー選び

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  •  【第4群】 会社・人という見えにくいリスク

     【第4群】 会社・人という見えにくいリスク

    ここまでは、住み心地の違和感がなぜ起きるのかを見てきました。では、その違和感は、誰のどの部分から生まれるのでしょうか。ここからは「会社」と「人」という、見えにくい部分を整理します。

    第8回 大手ハウスメーカーは安心という「幻想」
    ― 巨大な組織が準備する、自社を守るための法律の壁

    「名前を知っている大きな会社なら、何かあっても守ってくれるはず」……そう信じて契約書に判を押す方は少なくありません。しかし、一級建築士として多くの紛争を見てきた私から言わせれば、会社の大きさと、あなたの安心は、決して比例しません。

    むしろ大手であればあるほど、万一トラブルが起きた際に「会社側の責任を最小限にする仕組み」が、驚くほど冷徹に整っています。

    弁護士が作り上げた「会社を守るための契約書や約款」という有利な条文

    大手の契約書や約款(やっかん)を読んだことがありますか? 専門用語が並ぶ書類は、経験豊富な弁護士たちが知恵を絞り、徹底的に「会社側が不利にならないよう」作り上げられた原案なのです。

    いざ住み始めてから不具合が見つかり、あなたが「こんなはずじゃなかった」と訴えても、彼らはこう答えます。

    「契約書の〇ページをご覧ください。仕様の範囲内と明記されています」

    「法的な基準は満たしております。これ以上の対応は致しかねます」

    アフターサービスを強く打ち出している会社であっても、実際には、会社が決めた標準仕様や社内ルールが優先され、施主の思いが十分にくみ取られない住宅も見受けられます。

    誠実な工務店なら「申し訳ない、すぐ直します」と動いてくれる場面でも、組織が大きいほど「社内ルール」や「契約の文言」が優先され、一人の施主の叫びは、巨大な壁に跳ね返されてしまうのです。

    【プロの眼力】

    大手を選ぶなら「ブランド」を信じるのではなく、**「その契約書が、施主を縛る鎖になっていないか」**を疑うことから始めてください。知名度と誠実さは、決してイコールではないのです。

    そして不安を感じたら、署名捺印は絶対にせず、別の建築会社を探しましょう。

    #ハウスメーカー選び #住宅ローン契約 #注文住宅のトラブル

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  • 第7回 住み心地の不満は、すべて「契約前」に防げる !― なぜ後悔は完成後にしか見えてこないのか

    第7回 住み心地の不満は、すべて「契約前」に防げる !― なぜ後悔は完成後にしか見えてこないのか

    完成した家に住み始めてから感じる違和感には皮肉な共通点があります。

    それは、「説明は受けていた」「数値はクリアしていた」「契約時は納得していた」にもかかわらず、住み初めると不満が噴き出しているという点です。

    なぜ、そんなことが起きるのでしょうか。50年現場を見てきた私から言わせれば、その原因はただ一つ。

    契約前の「建築会社の計画判断」が、あなたの実際の「暮らし」と噛み合っていなかったからです。

    性能の「数値」は、あなたの「体感」を保証しない

    「冬の室内が思ったより寒い」「夜になると室内が暗い」といった不満。これらは多くの場合、法的な「欠陥」にはなりません。断熱・換気性能や照度の数値は、建築会社の基準(標準仕様)をクリアしているからです。

    しかし、ここに落とし穴があります。

    建築会社が提示する「標準」や「数値」は、あくまで「一般的な、無難な暮らし」を想定したものです。

    あなたの地域は?

    あなたの生活習慣は?

    あなたが家の中で一番大切にしたい時間は?

    これらの「あなただけの前提」が設計図に落ちていなければ、出来上がるのは「誰かのための無難な家」であって、「あなたのための快適な家」ではありません。このズレこそが、住んでから感じる違和感の正体なのです。

    このズレは「図面」や「モデルハウス」では見えない

    この問題が厄介なのは、家が建つまで「体感」できないことです。

    モデルハウスは最高に美しく見えるように作られています。営業担当は「暖かいですよ」「明るいですよ」と、耳に心地よい言葉を並べます。

    しかし、その言葉の裏にある「具体的な根拠」を、契約前にどれだけの施主が確認できているでしょうか。

    入居後に「暗いから照明を増やしたい」「寒いから暖房を強化したい」と思っても、それはすべて高額な「追加工事」となります。「聞いていた話と違う」と訴えても、「仕様通りに作りました」という壁に跳ね返され、多くの施主が泣き寝入りすることになるのです。

    施主家族の運命を分けるのは契約前の「対話と確認」

    住み心地の不満のほとんどは、契約のハンコを押す前にしか防げません。

    建築会社に任せきりにするのではなく、「この設計で、私たちの暮らしがどう実現されるのか」を徹底的に問い正してください。

    「暖かさ」や「明るさ」といった曖昧な言葉を、具体的な「生活の場面」へと翻訳し、納得いくまで説明させる。それができる会社かどうかを見極めることが、最大かつ唯一の防衛策です。

    家づくりは、建てるまでが勝負ではありません。住んでからの数十年を守るための戦いは、契約前からすでに始まっているのです。

    【ここまでのまとめ】

    住み心地の違和感や不満は、施工の問題だけではなく**「契約前のあなたの判断ミス」**から始まっています。

    あなたの暮らし(どの部屋で、いつ、何をするか)が、設計の条件として「図面や仕様書」に落ちているか。

    それを、あなた自身が契約の前に、しっかり確認することだけが、後悔を防ぐ唯一の手段です。

    #家づくり #注文住宅 #住み心地

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  • 第6回 照明計画の「おしゃれ」と「明るさ」は、別問題 ―「眩しいのに暗い」という現実の失敗

    第6回 照明計画の「おしゃれ」と「明るさ」は、別問題 ―「眩しいのに暗い」という現実の失敗

    家づくりが進むと、内装に合わせて照明を選ぶ楽しい時間がやってきます。カタログには「ホテルのような間接照明」や「スッキリしたダウンライト」が並び、夢が膨らみます。

    しかし、ここにも大きな罠が潜んでいます。実は入居後、家族が最も「こんなはずじゃなかった」と不満をこぼしやすいのが、この照明計画なのです。

    「おしゃれ」なダウンライトが目を疲れさせる

    最近の主流は、天井に小さなLEDライトを複数埋め込むスタイルです。

    特に人気なのがスイッチ一つで「暖色(オレンジ系)」「寒色(青白系)」「白色」と色味を変えられるタイプ。一見、気分に合わせて雰囲気を変えられる便利な機能に思えます。

    しかし、ここで見落とされがちなのが、LED特有の「眩しさ(グレア)」です。

    LEDは一つひとつが強い光を放つスポットライトのような性質を持っています。ふと見上げたときに直接光が目に入ると、刺すような眩しさを感じます。

    さらに、最近流行りの「白いフローリング」を採用している場合、事態はより深刻です。天井からの強い光が真っ白な床に反射し、下からも突き上げるような眩しさを生みます。その結果、「部屋全体はぼんやり暗いのに、目に入る光だけがやたらと眩しくて疲れる」という、本末転倒な状況が起きてしまうのです。

    「ホテルのような家」では、新聞が読めない

    モデルハウスや施工写真でおしゃれに見える「雰囲気重視」の照明。しかし、生活の場としては不十分なケースがあります。

    「間接照明、夜になると、手元が暗くて本や新聞が読めない」

    「ダイニングテーブルで子供が宿題をするには明るさが足りない」

    このような不満が入居後に出てきても、埋め込み式のダウンライトは後から簡単に位置を変えたり、器具を増やしたりすることができません。交換するには天井を剥がすような大掛かりな追加工事が必要になることもあり、結局、多くの施主が不便を我慢しながら「泣き寝入り」することになるのです。

    失敗を防ぐための「生活目線」の確認

    照明計画を建築会社に任せきりにするのは禁物です。

    私は、打ち合わせの際に必ず次のことを確認するよう勧めています。

    「この照明で、私の目でも夜に新聞が読めますか?」

    「床に反射した光が、テレビを見るときに眩しく邪魔になりませんか?」

    担当の「計算上の数値(ルクス)は足りています」という言葉に騙されてはいけません。大切なのは、

    「どの部屋で、誰が、何をするのか」という日常の動作を具体的に想像することです。

    「おしゃれ」と「実用性」は、意識しなければ両立しません。そのバランスを、施主の生活感覚に寄り添って提案できるかどうか。そこに、建築会社の照明設計の力が如実に表れるのです。

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  • 第5回 建築会社の知識・技術力の差は、想像以上に大きい ― なぜ「普通」に見えて、中身が違うのか

    第5回 建築会社の知識・技術力の差は、想像以上に大きい ― なぜ「普通」に見えて、中身が違うのか

    【第3群】なぜそんな家が建つのか(仕組み的原因)

    前回お伝えしたように「冬の室内が思っていたより寒い」「説明と体感がちがう」と感じる原因は、快適とされる計画数字そのものではありません。

    その土地の気候をどう考えていたか。その家族の暮らし方をどう考えたか。それを設計にどう生かしたか。

    この違いが、住み始めてからの大きな差になります。なぜその差が生まれるのか。

    本書では、続いて、建築会社ごとの知識と技術の違いを順に説明します。

    家づくりを考え始めたとき、多くの方は「建設業の許可を持っている」「有名な会社である」「担当者が親切だ」といった理由で、その会社を信頼しようとします。しかし、一歩現場の裏側に踏み込めば、そこには想像を絶する**「知識と技術の格差」**が存在しています。

    私は50年以上この業界に身を置き、数多くの欠陥住宅の調査や訴訟に関わってきましたが、そこで見た現実は残酷なものでした。

    「小学校レベル」から「一流大学レベル」までの差

    建築会社の知識・技術力の差は、例えるなら「小学校低学年レベル」から「一流大学卒業レベル」ほどの開きがあります。しかも恐ろしいことに、これらは「外見(会社の規模やモデルハウスの立派さ)」では全く見分けがつかないのです。

    住宅トラブルの現場で、私が弁護士と共に建築会社の経営者や担当者と向き合った際、彼らは一様にこう口にします。

    「手を抜いたつもりはありませんでした」

    「これで問題ない(正解だ)と思っていました」

    彼らは嘘をついているのではないかもしれません。本当に「知らなかった」のです。最新の建築法規も、雨漏りを防ぐための防水理論も、構造上のリスク予測も、それらを判断するための**「基本的な知識」が欠如したまま、家を建てているプロの建築会社が実在する**のがこの業界の恐ろしさです。

    「許可がある=安心」という思い込みを捨てる

    今の制度では、建設業の許可を取得するハードルは決して高くありません。しかし、この許可があることと、高品質な家を建てる技術があることは別問題です。

    中には、社内に建築の有資格者が一人もいないまま営業マン主導で工事の判断を下している会社や、技術的な是非をすべて「現場の職人任せ」にして、会社として責任ある管理ができていないケースも珍しくありません。

    さらに深刻なのは、重大な施工ミスを犯しても反省せず、改修費用が膨らむと会社を計画的に潰し、別の会社名で、場所を変え平然と営業を再開するような「逃げ道」が業界の構造として存在していることです。

    施主ができる唯一の防衛策

    「大手だから」「担当者がいい人だから」という主観的な判断だけで契約を結ぶことは、ギャンブルに近い行為です。

    建築会社の真の実力を見抜くには、彼らの**「経営と技術的な裏付け」**を問う必要があります。

    たとえば、

    「この会社は設立から何年で、年間何棟の新築住宅を建てていますか?」

    「住宅建築の工法を採用している技術的な根拠(エビデンス)は何ですか?」

    こうした問いに対し、数字や論理で明確な「筋道」を答えられるか。それが、あなたの大切な財産と命を守るための、最低限の選別基準になります。

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  • 第4回 「性能は良いはずなのに寒い」の正体 ― なぜ「住んでからの違和感」は必ず起きるのか

    第4回 「性能は良いはずなのに寒い」の正体 ― なぜ「住んでからの違和感」は必ず起きるのか

    【第2群】住んでから気づく「違和感」の正体

    なぜ「性能が良いはずの家」で後悔が生まれるのか

    前回までは、家を建てる前の「価格」や「契約」に潜む落とし穴についてお伝えしてきました。では、そこでの判断を誤ったまま家が完成すると、どうなるのでしょうか。

    今回からは、実際に暮らし始めてから多くの施主が直面する「住み心地の違和感」について、具体例を挙げて解説します。まずは、最も相談が多い**「寒さ・暑さ」**についてです。

    家づくりを考え始めたとき、多くの方は「冬でも暖かいですか?」と営業担当に尋ねます。担当者は自信を持って「最新の断熱性能ですから、暖かいですよ」と答えるでしょう。

    しかし、いざ入居してみると「思っていたより寒い……」と落胆するケースが後を絶ちません。これは必ずしも欠陥工事や性能不足が原因ではありません。多くの場合、「地域性」と「生活習慣」に対する、設計段階での想像力不足から生じています。

    北海道の室内「25℃」と、快適設計の「20℃」のズレ

    私は長年、北海道などの寒冷地での家づくりを見てきました。 そこで暮らす人々には特有の習慣があります。冬の外気温がマイナス10℃を下回る中、家の中を25℃前後まで上げ、Tシャツ1枚でアイスを食べるような「真冬の暖かさ」を当たり前として生きてきた方々です。                        

    これを実現してきたのは、ひと昔から北海道内では、外気の寒暖差50℃~60℃(気温:夏Max35℃ 冬Max-25℃)と全国的に見ても厳しい気候であっため、窓や壁・床・天井の断熱性能と暖房計画については、旧式ではありますが優れていたと感じます。                    つまり、断熱だけは先がけ的に、暖かな室内を重要視した家づくりが行われてきた歴史があるのです。

    一方、現代の最新住宅が掲げる「快適温度」は、理論上18℃〜22℃程度です。高気密・高断熱住宅ならこの温度で十分快適だと計算されますが、長年25℃の環境に慣れた体にとっては、この「理論上の適温」は**「ただの寒さ」**でしかありません。

    設計者は「あなたの冬の暮らし」を知っているのか

    建築会社はコストや光熱費のバランスを考え、可もなく不可もない暖房・換気計画を提案します。特にハウスメーカーなどの場合、設計責任者が雪国ではない暖かな地域の出身であることも多いためか、厳しい寒さから帰宅した瞬間に「体が芯から温まる温度」への切実な欲求が、設計条件として抜け落ちていることがあります。

    これは「欠陥」ではありませんが、施主にとっては「取り返しのつかない後悔」になります。

    失敗を防ぐための問いかけ

    大切なのは、性能の数字(UA値など)だけを見て安心しないことです。

    私が施主の皆さんに推奨しているのは、建築会社にこう問うことです。

    「私たちは冬、家の中でどんな格好をして、どんな風に過ごしたいのか。その暮らしをこの設計で本当に実現できますか?」

    「暖かい家ですよ」という抽象的な答えを鵜呑みにしてはいけません。あなたの生活習慣を「暖房・換気設計の条件」として具体化できる技術者かどうかを見極めること。それが、住んでからの違和感を防ぐ唯一の道です。

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