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  • 【第5群】もう一つの家づくりの選択肢

    【第5群】もう一つの家づくりの選択肢

    第12回 建築会社に「依頼」する前に知るべきこと ―  大きな金額の差額を生んだ「建築士」の有効利用

    「家づくりは、有名な会社に全部お任せするのが一番安心」……そう思っていませんか?

    しかし、その「安心」という感覚が、時として数百万円、数千万円という単位の施主損失を招いている現実があります。

    今回は、私が実際に出会った、ある92歳の女性施主様のエピソードを通して、建築業界の知られざる構造と、あなたの資産を守る「もう一つの選択肢」についてお話しします。

    92歳の願いを阻む「8800万円」の壁

    4年前、私の講習会に一人の高齢女性が娘さんと共に来られました。

    「死ぬまでに、暖かな家に住みたい」

    築60年の寒い自宅を建て替えたいという切実な願いでした。しかし、提示された相談票を見て私は愕然としました。

    あるハウスメーカーが、90坪の計画で**「8800万円」**もの見積りを出し、毎日のように自宅へ押しかけて仮契約を迫っていたのです。さらに解体費に550万円、まだ契約もしていない段階で設計料110万円を請求されるという信じがたい状況でした。

    2086万円の損失を食い止めた「建築士」の眼力

    私は、そのハウスメーカーとの交渉を白紙に戻し、**「設計施工分離発注方式」**へと舵を切り直しました。

    これは、設計と工事の監理を独立した「建築士事務所」が受け持ち、工事を「建築会社」が行うという、大きなビルや公共工事が行う一般手法で、設計と工事を明確に分ける方法です。

    結果、その後どうなったか。

    解体工事: 550万円 → 330万円・・・(220万円の削減)

    地盤調査: 22万円 → 11万円・・・(11万円の削減)

    新築工事費: 8800万円(外構別途90坪) → 6945万円(外構込92坪)・・・(1855万円の削減)

    今回は、外構工事まで含めても、ハウスメーカーの提示額より合計で2086万円もの差が出ました。

    もし、建築士が第三者の立場で「工事費の正当性」を査定していなければ、この差額は消えていたのです。

    ただ、今回のケースは92坪の2世帯住宅なので、一般の小さな4LDK住宅にすると3軒分になります。

    今回、実際の住宅の延べ面積は92坪で、2086万円の差ですから、仮に、これを3軒分として3で割ると住宅1軒分の差額は、約695万円になります。このように建築士が施主の見方となり、施主の代理で家づくりに取り組むと、優秀な施主にとって「鬼に金棒」となること間違いなしです。

    設計施工一括発注「自分を自分で採点する」仕組みの危うさ

    なぜ、これほどまでの差が出るのでしょうか。

    現在の主流である「設計施工一括発注(ハウスメーカーなど)方式」は、窓口が一つで便利に見えます。

    しかし、構造的には以下のようになっています。

    自分でテストを作り(設計)

    自分で回答を書き(工事)

    自分で採点をする(工事管理 完了検査)

    これでは、ミスがあっても、コストが不透明でも、施主には何も見えません。

    なぜか「プロ(会社)対 素人(施主)」という圧倒的に不利な構図だからです。

    建築士は、あなたの資産を守る「用心棒」

    一方、「設計施工分離発注方式」は、「プロ(建築士)対 プロ(建築会社)」という構図を作ります。

    建築士は、施主の代理人(エージェント)として、図面通りに工事が行われているか、手抜きはないか、見積は適正かを厳しくチェックします。

    「建築士に頼むと設計料がかかって高い」というのは誤解です。

    一括発注の工事費に含まれている不透明な経費を削ぎ落とし、適正な価格で発注させることで、建築士に設計料を払ってもなお、総額では安く、かつ高品質な家が建つケースが多々あるのです。

    結論:設計料は「無駄」ではなく「保険」である

    建築会社の社員は、最終的には「自社の利益」を守ります。しかし、分離発注の建築士は「施主の利益」を守ることが仕事です。

    設計から工事まで「すべてを任せたい」という方には向きませんが、「納得して、長く安心して住める家を建てたい」と願うなら、建築士を味方につけることは、何よりの防衛策になります。

    「設計施工分離発注方式」で3階建ての二世帯住宅を建てた
    92歳のおばあ様のその後

    私の人生で、残る寿命の短い施主に出会って、私は感動し、仮の母だと思い、誠心誠意、家づくりのお手伝いをさせていただきました。

    あの92歳のおばあ様は、完成した家の玄関まで、車椅子ではなく自らの足で歩んでいかれました。あの満面の笑みは、正しい「選別」が生んだ、私への最高のご褒美だったと確信をしています。

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