第3回 なぜ施主は「価格」と「契約」で必ずつまずくのか ― 最初の判断ミスが、取り返しのつかない差になる

家づくりを考え始めたとき、多くの人は建築会社ごとの専門分野や得意・不得意を深く意識しないまま、会社選びを進めてしまいます。

「どの会社でも大きな違いはないだろう」と感じるのも無理のない考え方です。

しかし実際には、会社ごとの専門分野と施主の希望がずれたまま進むことが、価格や契約段階での混乱につながるケースがあります。問題は、価格そのものではありません。また、契約そのものでもありません。

最初の会社選びの時点で、方向がずれていることです。なぜそのずれが大きな差になるのか。そして、どこを確認しておくべきなのか。本書では、その理由と背景を整理します。

3.専門分野・不得意を見極めずに選ぶ危険

住宅づくりに関わる建築会社には、それぞれ得意とする分野と、そうでない分野があります。

これは、会社の規模や実績の大小とは別の話です。

ハウスメーカー、ビルダー、工務店といった業態の違いだけでなく、和風・洋風・和洋折衷といった意匠の傾向、木造・鉄骨・RC造といった構造、さらに木造でも在来工法か壁式構造かなど、会社ごとに積み重ねてきた経験やノウハウには明確な違いがあります。

「つくれる」と「得意」は別物

施主が、建築会社の専門分野とは異なる住宅を希望した場合、多くの会社は次のように答えます。

「当社でもご希望の住宅はつくれます。安心してお任せください。」

しかし、この言葉の裏にある意味は、「専門ではないが、似たようなものなら対応できる」というケースが少なくありません。

その結果、完成後に「イメージとまったく違った」「洋風を希望したが、外観だけで中身は量産住宅のようだった」「純和風を求めたが、木のぬくもりが感じられなかった」といった不満が生じることがあります。

これは、施主の要望が曖昧だったからではありません。

建築会社側が、専門外の分野を“対応可能”として引き受けたことが原因である場合が多いのです。

医療に例えると見えやすい違和感

たとえば、医師免許を持つ外科医であっても、内科の専門治療を万全に行えるとは限りません。

過疎地などでやむを得ず簡易的な対応をすることはあっても、都市部であれば、専門医に診てもらいたいと考えるのが自然でしょう。住宅づくりも同じです。

「資格がある」「法的に建てられる」ことと「その分野を得意としている」ことは、まったく別です。

本書が問題にしたい現実

住宅建築は営利事業です。そのため多くの建築会社は、自社の専門分野ではないと分かっていても、仕事を断らない傾向があります。

だからこそ、「この会社は、私たちが望む家づくりを本当に得意としているのか」を見極める責任は、施主側にあります。

本書が伝えたい判断ポイント

建築会社選びにおいて、「できます」という言葉をそのまま信じてしまうこと、施工事例の数や傾向を確認しないことは、大きな判断ミスにつながります。

得意分野を具体的に説明できない、過去の実例を明確に示せない、こうした会社には、慎重になる必要があります。

建築業界ではあまり語られませんが、すべての建築会社が、すべての施主の住宅づくりに向いているわけではありません。この現実を知ったうえで質問し、見極めること。それが、後悔しにくい建築会社選びにつながります。

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