【第2群】結果として現れる「住んでからの違和感」「住み心地の違和感は施主の判断ミスの結果」が要因
前回までは、価格や契約でつまずく理由をお伝えしました。では、そのまま進んだ家づくりは、完成後どうなるのでしょうか。ここからは「住んでから出てくる違和感」について見ていきます。
第4回 寒さ・暑さ ― なぜ「住んでからの違和感」は必ず起きるのか
家づくりを考え始めたとき「この家は冬でも暖かいか」「夏は暑くないか」といった印象で、建築会社を選ぼうとする人は少なくありません。それは、分かりやすい目安に見えます。
しかし、実際には、その選び方が、住み始めてからの「寒い」「暑い」といった不満につながることがあります。
「暖かい家」と聞いて選んだのに、なぜ寒く感じるのか。
欠陥ではないのに、なぜ不満が残るのか。本書では、寒さ・暑さを例に、どのような選び方が、あとからの違和感につながるのかを順に説明します。
4.寒さの感じ方は地域と生活習慣で違う
新築住宅に入居したあとで、施主からよく聞く声のひとつに「冬の室内が、思っていたより寒い」というものがあります。
しかし、この訴えは必ずしも欠陥や性能不足を意味するものではありません。多くの場合、その原因は地域性と生活習慣による体感温度の違いにあります。
この問題が特に顕著に表れるのが、北海道などの降雪地域です。冬の外気温がマイナス10℃以下になることも珍しくない地域では、長年の生活習慣として、室内温度を25℃前後まで上げ、冬でも半袖で過ごすという暮らし方をしてきた方も少なくありません。
一方、現在の新築住宅で多く採用されている暖房計画は、主にセントラルヒーティングやエアコン暖房です。
高断熱・高気密住宅を前提とした全室暖房が主流で、理論上の快適温度は18℃〜22℃程度とされています。
近年の住宅は断熱・気密性能が大きく向上しており、床付近と天井付近の温度差も2℃程度に抑えられるため、数値上・理論上は「快適な住宅」と評価されます。
しかし、長年25℃以上の室温で冬を過ごしてきた人達にとっては、この理論上の快適温度が、どうしても「寒い」と感じられてしまうのです。
建築会社としても、暖房計画の基本は全室暖房であり、必要以上に設定温度を上げることは、24時間換気による熱損失やランニングコストの増大につながるため、慎重な設計にならざるを得ません。
その結果、「住宅の性能は良いはずなのに寒く感じる」という、施主側との認識のズレが生じやすくなります。
また、実際の寒さの要因としては、床断熱の施工不良による床の冷たさ、窓から冷気が下降するコールドドラフト現象、ローコスト住宅に見られる断熱・気密計画の粗悪さなども考えられます。
対策として全室床暖房を採用する例もありますが、この床暖房だけでは窓ガラス付近の冷気対策が不十分になりやすく、逆にセントラルヒーティングの壁パネルのみの暖房では、床断熱の施工精度や仕上げ材によって、足元の寒さが残るケースもあります。
私の経験上、降雪地域ではセントラルヒーティングの壁パネルに加え、リビングなど一部に床暖房を併用する方式や冷暖房エアコンを利用するが、比較的バランスの取れた暖房計画のひとつだと感じています。
ただし、こたつや小型ストーブで何十年も冬を過ごしてきた方であれば、現在の一般的な暖房計画でも十分に満足される場合もあります。
つまり、寒さの感じ方は断熱性能や設備仕様だけで決まるものではなく、最終的には人それぞれの体感と生活習慣に大きく左右されるのです。
さらに、大手ハウスメーカーなどでは、暖房設計の責任者が東北以南で長年暮らしてきたケースも多く、冬の室内が多少寒くても違和感を覚えにくい生活感覚を持っていることがあるようです。
そのため、北海道のように、厳しい外気環境から戻った際に、室内温度が25℃以上でなければ、体がなかなか温まらないという感覚や、冬でも半袖で過ごしたいという生活習慣が、設計段階で十分に想像されていない場合もあるのです。
この感覚の違いは、関東以南の真夏に、外気温35℃〜40℃の中から冷房の効いた室内に入った際、18℃程度まで室内が冷えていないと体がすぐに涼しくならないと感じる状況と、よく似ています。
季節は違っても、人の体が長年の環境に慣れてしまうという点では同じ現象だと言えるでしょう。
現実問題として、施主から特別な要望がなければ、暖房計画はコスト重視の標準仕様に落ち着いてしまう傾向があることも否定できません。
この問題は欠陥でも間違いでもなく、地域性・生活習慣・設計思想の感覚のズレから生じる認識の差なのです。
北海道などの降雪地域で住宅を建てる施主には、この現実を事前に理解したうえで、自分たちがどのような冬の暮らしを望むのかを具体的に整理し、暖房計画として建築会社に明確に伝えることが重要だと私は考えています。
そして、その要望を「聞いたかどうか」ではなく、「設計としてどう具体化するか」を説明できるかどうかが、建築会社の力量差として現れます。
【第3群】なぜそんな家が建つのか(仕組み的原因)
第5回 建築会社の知識・技術力の差は、想像以上に大きい
家づくりを考え始めたとき、
「断熱の数字は十分か」「暖房設備はそろっているか」といった説明をもとに、家の快適さや会社の良し悪しを決めようとする人は少なくありません。それは、分かりやすい目安に見えます。
しかし実際には、数字や設備が同じでも、住み心地に大きな差が出ることがあります。
前回お伝えしたように「冬が思ったより寒い」「説明と体感がちがう」と感じる原因は、数字そのものではありません。
その土地の気候をどう考えたか。その家族の暮らし方をどう考えたか。それを設計にどう生かしたか。
この違いが、住み始めてからの差になります。なぜその差が生まれるのか。
本書では、建築会社ごとの知識と技術のちがいについて、順に説明します。
5. 建築会社の知識・技術力の差は想像以上に大きい
私は住宅づくりに関わって50年以上になります。その中で私が強く感じているのは、完成後の見た目や設備の違い以上に、建築会社ごとの知識・技術力の差は想像以上に大きいという現実です。
そして、この差は、一般の施主が打ち合わせ段階で見抜くことが、非常に難しいところにあります。図面も説明も、一見すると整っており、「普通の家」「問題なさそうな建築会社」に見えるからです。
しかし、実際に住宅トラブルや欠陥住宅の相談に関わってきた経験から言えば、多くの問題は、意図的な手抜きや悪意よりも、建築会社自体の知識不足や判断力の欠如から生じています。
これまで、
・社内に建築の有資格者がいない
・営業経験しかない人物が経営判断を行っている
・技術的な是非を現場任せにしている
といった体制の建築会社が関わった住宅トラブルに、施主側の立場で数多く関与してきました。
弁護士と共に、建築会社の担当者や経営者と向き合う中で、私が繰り返し耳にしてきた言葉があります。
「手を抜いたつもりはありませんでした」「これで問題ないと思っていました」これらを冷静に突き詰めていくと、多くのケースで、最新の法規や基準を十分に理解していない、施工上のリスクを予測できていない
そもそも、判断材料となる基本的な建築知識が不足しているという状況が見えてきます。
結果として、欠陥住宅になってしまう。これは珍しい話ではありません。
「許可がある=安心」ではない現実
現在の制度では、建設業の許可を取得すること自体は、決して高いハードルではありません。中には、建設業の許可を持たないまま工事を請け負っている業者も存在します。
しかし施主にとって、
・誰が技術的な最終判断をしているのか
・設計、施工、法規を良く理解して指導できる人材がいるのか
こうした点を見極めることは、非常に困難です。
表向きは「普通の建築会社」に見えても、中身の知識量や技術力には、現状はっきりとした差があります。
同じミスを繰り返す会社の多くは、弁護士が介入し、施工ミスや不備を認めさせたケースでも、建築会社の側から「根本的に間違っていた」などという反省の言葉を聞くことは、ほとんどありません。
中には、改修費用が大きくなると会社を畳み、別の場所で新たに会社を立ち上げ、何事もなかったかのように営業を続けている例もありました。これは特別な話ではなく、住宅業界の構造として起こり得てしまう現実です。
本書が伝えたい現実
私の実感として、建築会社の知識・技術力の差は、「小学校レベル」から「一流大学卒業レベル」まであると言っても、決して大げさではありません。
この差は、価格、会社の規模、知名度だけでは判断できないものです。
だからこそ、有名だから安心大きな会社だから大丈夫、担当者の感じが良いから信用できる、こうした判断軸だけで契約してしまうことが、家づくりで最も取り返しのつかないミスになり得ます。
本書では、質問を通して、建築会社の考え方と、技術的な裏付けを見極めるという視点を、これからも重視していきます。
第6回 照明計画は「おしゃれ」と「明るさ」は別問題 ― 図面では分からない失敗例
家づくりを考え始めたとき、
「見た目がおしゃれかどうか」「モデルハウスが明るく見えたかどうか」で、照明を決めてしまう人は少なくありません。それは、分かりやすい決め方に見えます。
しかし実際には見た目が良くても、住み始めてから「暗い」「まぶしい」「使いにくい」と感じることがあります。
図面やカタログの上では問題がないように見えても、家具の置き方や家族それぞれの生活の動き方まで良く考えていないと不便が残ります。
なぜこのようなことが起きるのか。どこを確認しておけば防げるのか。
本書では、照明計画で起きやすい失敗を例に、順に説明します。
6. 照明計画は「おしゃれ」と「明るさ」は別問題
近年の住宅では、室内照明のLED化が進み、ダウンライトや間接照明といった、壁や天井に埋め込むタイプの照明器具を用いた、「見た目のデザイン性」を重視する照明計画が主流になっています。
これらの照明器具は、施主が後から自分で簡単に交換できるものではなく、多くの場合、建築工事の一部として建築会社が設置します。その結果、入居後に思わぬ不満やクレームが生じるケースが増えています。
その代表的な声が、
「夜になると、思っていたより室内が暗い」
「おしゃれなホテルのようだが、本が読めない」
「新聞や書類を見るには明るさが足りない」
といったものです。
かつての照明器具には「60W」「100W」といった表示があり、一般の方でも、その表記を見れば、ある程度の明るさを感覚的に理解できました。
しかし現在のLED照明では「60W相当」「100W相当」といった表記に変わり、実際の明るさが想像しにくくなっています。
さらに、LED照明は器具の形状や配光(光の広がり方)、色温度によって、同じ「〇〇W相当」と書かれていても、体感する明るさが大きく異なります。そのため、数値上は十分でも、生活の中では「暗い」と感じてしまうことが少なくありません。
問題は、こうした不満が入居後に発覚しても、「施主が選んだ照明器具を工事として設置したものなので、交換には追加費用がかかる」と説明され簡単には変更や交換ができない点です。
結果として、多額の追加工事費を嫌って、泣き寝入りする施主も少なくありません。
この照明の問題は、構造や性能の欠陥のように表面化しにくく、比較的「影に隠れたクレーム」として見過ごされがちですが、日々の暮らしの快適性には大きく影響する重要なポイントです。
照明計画で特に注意すべきなのは、
「おしゃれ」と「明るさ」は、必ずしも両立しないという事実です。
モデルルームや施工写真で見た雰囲気が良くても、それが自分たちの日常生活に十分な明るさを提供してくれるとは限りません。
そのため、照明計画では
・どの部屋で
・どの時間帯に
・どんな作業をするのか
を具体的に想定し、「雰囲気」だけでなく「実用性」を基準に考えることが重要です。
建築会社に任せきりにするのではなく、「この明るさで、本や新聞は問題なく読めますか」、「夜に家事や作業をするには十分ですか」といった生活目線の確認を、設計段階で必ず行うべきだと、私は考えています。
そして、この「生活を想像した説明ができるかどうか」は、照明に限らず、建築会社の知識量や設計力の差が最も分かりやすく表れる部分でもあります。
第7回 住み心地の不満は、なぜ完成後に噴き出すのか ― 判断ミスと設計・施工の因果関係
家づくりでは、住み始めてから「冬が思ったより寒い」「夜になるとなぜか暗い」「説明と体で感じることが違う」といった不満が出ることがあります。
しかし、これらはたまたま起きた失敗ではありません。
多くの場合、契約前や設計の段階で決めたことが、どのように図面や工事に生かされたかによって起きています。
本書では、これまで取り上げてきた寒さや照明の例をふり返りながら、なぜ住み始めてから不満が出やすいのかを順に説明します。
7.住み心地の不満は、なぜ完成後に噴き出すのか ― 判断ミスと設計・施工の因果関係
完成した家に住み始めてから感じる違和感には、ある共通点があります。
それは、「説明は受けていた」「数値上は問題ない」「契約時は納得していた」という状態であるにもかかわらず、不満が生じているという点です。
前回までに取り上げた
・冬が思ったより寒い
・夜になると室内が暗い
といった声も、その典型例です。
これらの不満は、断熱性能や照明器具の性能が“足りなかった”から起きているわけではありません。
多くの場合、住み心地の不満は、施主が契約前に行った「説明をどう受け取ったかという判断」と建築会社が行った設計・施工の考え方が、噛み合わないまま進んでしまった結果として表れています。
施主が契約前に行っているのは「この家は暖かそうか」「明るくて暮らしやすそうか」といった営業説明や言葉の印象をもとにした判断です。
一方で、設計や施工を行う建築会社は、
・標準仕様
・コストバランス
・一般的な暮らし方の想定など
といった、設計上の基準をもとに家づくりを進めています。
ここで、施主の生活習慣や体感が「どの部屋で、どの時間帯に、何をするのか」という具体的な設計条件として整理されていなければ、設計内容は自然と「多くの人にとって無難な暮らし方」を前提としたものになります。
その結果「説明どおりの仕様の家」ではあるが、「自分たちの暮らしに合った家」ではないというズレが生じます。このズレによる寒さや暗さへの不満は、施工ミスとは異なり、法的に問題にならないことがほとんどです。
なぜなら、断熱性能や照度などの数値上の基準は満たしているケースが多いからです。
しかし、
・どの地域で暮らしてきたのか
・どのような生活習慣を持っているのか
・家の中で何を重視して過ごしたいのか
といった前提が、設計に反映されていなければ、住み心地に違和感が出るのは自然な結果です。
これは施工の良し悪しではなく、契約前に施主が受け取った説明の理解と、設計の進め方が一致していなかったことによって生じる必然だと言えます。
この種の問題が厄介なのは、
・図面では分かりにくい
・モデルルームでは判断できない
・完成前に体感できない
という点にあります。
さらに、入居後に気づいたとしても、「仕様どおりです」「変更するなら追加工事になります」という説明で終わってしまうケースも少なくありません。
つまり、完成後に噴き出す住み心地の不満の多くは、契約前にしか防げない問題なのです。
整理すると、原因は一つです。それは、施主の暮らし方や感覚が、設計条件として十分に反映・整理されないまま家づくりが進んでしまうことです。
寒さも、照明も、設備も、「良い・悪い」ではなく、施主家族の暮らし方の要望に「合っているか・合っていないか」の問題です。
そして重要なのは、施主の要望や生活の前提が、設計の条件としてきちんと共有・反映される仕組みがあるかどうかです。この点が曖昧なまま進めば、完成後の満足度は大きく左右されてしまいます。

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